管理者必見!リモートワークの労務管理でよくある6つの悩みと解決策
リモートワークを導入することが決まったものの、管理者側として労務管理をどのようにすればよいか悩む方もいるはずです。
今回の記事では、リモートワークでの労務管理を始める上でのよくある悩みを6つ対策法と合わせて解説します。
目次
1.企業側のリモートワークの課題No.1は「労働時間の管理」
引用:平成27年 JILPT 情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査より
独立行政法人労働政策研究・研修機構が、平成27年に従業員規模1人以上の日本全国の1万企業および調査対象企業で働いているテレワーカーを含む従業員6万人を対象に調査を行なったところ、経営者・推進担当者の課題は「労働時間の管理が難しい」が最も多い結果となりました。
リモートワークでは、オフィスで働くよりも従業員の就労実態が把握しにくく、誰かが監視している訳ではないため、労働時間の管理が難しいと感じるのでしょう。
仮にリモートワーク中に監視カメラ役として、業務を監視するということも出来ますが、従業員からすれば、心理的な圧迫が大きくなり、かえって働きにくなります。
逆に従業員に任せっきりにしてしまうと、勤務時間の不正やさぼりにつながる可能性もあります。
従業員の労務管理を「どのように行うのか」は、様々な課題点があり、多くの会社で対策が取られています。次の見出しでは具体的な方法を紹介します。
2.リモートワークの労務管理を始める上での悩み6選
リモートワークの労務管理を始める上での悩みを紹介します。どれも必ずと言っていいほど出てくる悩みなので対策方法と併せて確認しましょう。
2-1.出退勤管理はどの方法が良い?
・電話
電話の場合、時間がかからない、報告業務のついでにコミュニケーションを取れるなどのメリットがあります。
・メール
電話よりは管理が楽で、件名のみのメールで報告するとよいでしょう。
例:【始業】(社員の名前)です。業務を開始します。
【就業】(社員の名前)です。業務を終了します。
管理者側は件名だけで連絡事項が把握でき、従業員側も考える部分が少ないため、 お互いに楽になります。
・チャットツール
メールよりもさらに管理が楽です。また、適宜、今日行った勤務内容などを報告させることで、タスクの進捗状況を把握しやすくなります。
例:
お疲れさまです。(社員の名前)です。
本日の在宅勤務の内容をご報告いたします。
・テレアポ20件
・提案書作成1件
・会議2件
今朝ご報告した予定よりも、若干多くの作業ができました。 明日は出社いたします。
・勤怠管理ツール
勤怠管理ツールを使うことで「勤務時間」「タスク管理」「給与支払い」をまとめて行うことができます。
これまで別々に管理していたものを一元管理できるため、正確な数字を把握しやすくなります。労務にかかるコストを減らすことができるため、おすすめです。
また、勤怠管理を選ぶうえでの注意点も確認しておきましょう。
・作業状況を把握しやすいか
・申請や承認機能の有無
・給与システムと連携しているか
テレワークのために導入した勤怠管理ツールが、自社にあったものではなかった場合、お金と時間の面で無駄になってしまいかねないので、しっかり確認しましょう。
2-2.休憩時間をどう扱うべきか?
リモートワーク中ですと、子供の面倒を見るのに業務から離れるという場面が出てくるかもしれません。このような場合、休憩時間の対応としては、2パターンが考えられます。
1つ目は、「休憩時間として扱った上で、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げを行うこと」です。この場合、就業規則に始業終業時刻の変更の旨を記載しておく必要があります。
例えば、「始業8:30、終業18:30、休憩12;00〜13:00。ただし、業務の都合により、始業・終業の時刻を繰り上げ、繰り下げることがある」と定めます。
このようにすれば、16:00〜16:30の間に30分間の中抜けした場合、終業時間を30分繰り下げ、19:00まで仕事をしてもらうことが可能です。
2つ目は、「休憩時間ではなく時間単位で、有給休暇として取り扱うこと」です。この場合は、労使協定が必要です。
1つ目との違いは、始業・終業時間に関して変更がないことです。1つ目のケースが最も多く、2つ目も徐々に増えてきている現状です。
2-3.人事評価はどうすべき?
リモートワークでは、管理者側は部下の働きぶりを確認することができないため、人事評価も合わせて変えていく必要があります。よくある評価制度を3つ紹介します。
・MBO評価
リモートワークでも従来のMBO評価は有効です。成果物を基準に「目標による部下の動機付け」を実施することが大切です。成果物に関しては、提出方法や頻度などをより具体的に設定すると良いでしょう。
・バリュー評価
リモートワーク環境だからこそ、会社の理念に基づいて仕事をしているかを評価に入れても良いでしょう。リモートワークでは全体会議などの物理的な一体感が得られないため、チームワークを高めることが重要です。
案件の抱え込みが発生した時に、さっと声をかけてメンバーを助ける姿勢は評価すべき項目でしょう。
・ノーレーティング評価
会社が部下への個別評価をやめ、各部署の上司が原資をもとに部下へインセンティブを配分する方法です。成果物が重視されるリモートワーク状況下だからこそ、上司が成果に応じて賃金を決めるのも良いでしょう。
2-4.従業員が業務中にケガをしたときは?
テレワーク実施中にケガをしてしまった場合、業務起因のものであれば労災が認められます。業務災害とは、労働者が業務を原因として負傷したり、疾病を得たり、死亡に至った場合のことを言います。
例えば、自宅でパソコン業務を行なっており、トイレに行くために作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した場合があります。これは業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められます。
仕事の時間と私的な時間を明確に区別することが必要となるため、労災申請には「事実の認定」が必要です。従業員にはケガなどがあったら、必ず報告させるようにし、業務中のケガであることを事実として記録に残すようにしましょう。
2-5.情報通信機器・通信費・水道光熱費の費用負担は?
リモートワークにおける情報通信機器・通信費・水道光熱費の費用負担はどのようにすべきなのでしょうか?
・情報通信機器
会社から貸与しているパソコンや携帯電話などの端末や周辺機器は、会社負担としているとことが多いです。
・通信回線
リモートワーク中は、自宅内のインターネット回線の使用料金などが発生するため、個人の使用と業務使用の切り分けが難しくなります。一定額を会社負担とする例が多いです。
・水道光熱費
通信回線費用同様に業務との切り分けが難しいため、一定額を支払うケースが多いです。負担割合は従業員と話し合って決めておき、書面に残しておくと安心です。
2-6.セキュリティ対策はどうする?
リモートワークを行う上で、セキュリティ対策は気になるところです。
パソコンを外に持ち出すことで情報漏洩のリスクが高まり、実際にトラブルが起きてしまうと、経営に大きな打撃を与える可能性があります。ここではセキュリティ対策の一部を紹介します。
・VPN接続環境の構築
VPNは、インターネット回線の中に仮想的に専用線を設けて、安全な通信経路を確保する技術です。データの盗聴や改ざんといった脅威から情報を守ることができます。
・機器には「コピー制御」を付ける
パソコンにパスワードを設定するのは当たり前として、USBメモリなどの重要なデータが入っているものは「コピー制御」を掛けておくことで情報漏洩のリスクを防ぎます。
・個人所有のパソコンに保存できないようにする
重要データを含むファイルは、ローカルに落として作業する人が多いでしょう。
しかし、ローカルに保存されたファイルは管理者側がコントロールできなくなるため注意が必要です。セキュリティがなされていない個人のパソコンにデータを保存すると、ウィルス攻撃を受ける可能性が高まります。
重要ファイルをローカルに保存できないよう禁止したり、個人情報が含まれるファイルを探索・隔離する機能をもったシステムもあるため、適宜活用することをオススメします。