内部統制の目的と重要性について4つのポイントから解説
上場企業であれば内部統制は必ず行わなければならない。そう理解はしていても「何の目的で行われているのか」をしっかり把握している方はそう多くはいらっしゃらないでしょう。
本記事では
- 内部統制は何がきっかけで始まったのか?
- 内部統制とはそもそも何の目的で行われているのか?
という内部統制の始まりから解説していきます。
内部統制の目的や目的を達成するための基本的要素、各人の役割と責任についても解説しています。内部統制について疑問に感じていることがある方はぜひご一読ください。
目次
1.内部統制はいつから何のために始まった?始まりと目的
1980年代、アメリカではエンロン事件やワールドコム事件といった不正会計や粉飾決算が多発しました。これらを防止するために制定された法律がSOX法です。
アメリカでのSOX法制定の流れを受け、日本でも2008年から内部統制報告制度が開始されました。金融商品取引法に則り、上場企業は毎年内部統制報告書の提出が義務付けられたのです。
日本版の内部統制報告制度をJ-SOX、アメリカ版をUS-SOXと呼んで区別しています。一般的に日本の上場企業はJ-SOXに基づいて内部統制を行わなければなりません。アメリカの証券取引所に上場している企業は、US-SOX版の内部統制も行う必要があります。
このようにして始まった内部統制制度は、次章にてご紹介する4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために行われています。
2.内部統制を行う4つの目的を理解しよう
内部統制には「業務の有効性及び効率性」「財務報告の信頼性」「事業活動に関わる法令等の遵守」「資産の保全」の4つの目的があります。これらの目的は一見独立しているようにみえて、相互に密接に関連しているものです。
2-1.業務の有効性及び効率性
業務の有効性とは、業務によってどの程度企業や事業の目的が果たせているのかを指しています。
また、業務の効率性とは企業の目的達成に欠かすことのできない資源である「時間」「人員」「コスト」がどの程度効率的に使用されているのかを指すものです。
業務の有効性や効率性を可視化することで業務の問題点や改善点を洗い出し、より効率的に事業を進めることを目的としています。
2-2.財務報告の信頼性
財務報告の信頼性とは、損益計算書や貸借対照表といった財務報告がどの程度信頼のできるものであるのかを指します。
財務報告の作成過程で不正が発生すると、冒頭で触れたエンロン事件やワールドコム事件のような不正会計・粉飾決算に繋がってしまいます。
不正会計・粉飾決算は株主を始めとするステークホルダーに大きな影響を与え、企業の信頼性を損なうものです。事業が継続できなくなる可能性すらあります。
財務報告に関わる業務を確認することによって、正しい財務報告が行われていることを担保する目的があります。
2-3.事業活動に関わる法令等の遵守
事業に関わる法令等の遵守とは、企業が法律や条例、社会規範などを無視した行為をしていないかどうか確認する目的で行われます。
法令等の遵守は、継続的に企業活動を行う上で必ず必要なものです。反社会的勢力との取引や法令違反などが明るみに出ると、株価や企業の信頼に大きな影響を与えます。最悪の場合、企業は事業活動を続けられなくなるでしょう。
そのような事態を防ぐためにも、事業活動等に関わる法令等の遵守は積極的に促進する必要があります。
2-4.資産の保全
企業には有形無形に関わらず多数の資産が存在しています。これらを適切に取得・使用・処分できるように図ることが資産の保全です。
株主などの出資によって企業活動が行われている場合、経営者にはその出資により入手した資産を適切に管理する責任があります。
また、顧客情報や製品情報といった企業機密が外部へ流出した場合、企業は業績不振や信頼の失墜といった大きなダメージを受ける可能性があります。
資産の保全は、企業の経営者や従業員がこれらの資産を不正に利用・持ち出しをすることを防止するために有効です。
3.内部統制の目的を達成するための6つの基本要素
内部統制の目的を達成するためには「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」「ITへの対応」の6つの基本的要素が適切に行なわれている必要があります。
ここではそれぞれの内容についてみていきましょう。
3-1.統制環境
統制環境とは、簡単にいうと内部統制が守られるような組織の気風や環境のことを指します。
従業員が働きやすい環境を作り、モチベーションを維持して働くことで「事業活動に関わる法令等の遵守」や「業務の有効性及び効率性」を向上させることができます。
従業員や経営者の内部統制に対する意識が低ければ、内部統制は適切に機能せず、内部統制の目的を達成することは難しくなってしまうでしょう。
そのため統制環境が適切に整備及び運用されているかどうかは、内部統制の目的達成において重要な要素となります。
3-2.リスクの評価と対応
リスクの評価と対応とは、内部統制の目的達成を妨げるリスクを洗い出し、またそのリスクに対して対応策を講じることを指します。
何が目的の達成を阻害しているのか理解し改善を図ることは、目的達成に必要なことです。リスクの評価と対応を繰り返すことにより、企業の内部統制はより適切なものへと近づいていきます。
リスク管理を徹底することで「財務報告の信頼性」や「資産の保全」が保たれ、盤石な経営基盤を作ることができます。
3-3.統制活動
経営者の指示や命令が適切に実行されるよう、権限や職責によってすべきことを定めたり、職務分掌や社内マニュアルを作成することによって適切な業務体制を整備することを指しています。
統制活動を行うことで「事業活動に関わる法令等の遵守」を徹底することができ、業務体制の強化につなげることができます。
3-4.情報と伝達
組織の内外及び関係者に必要な情報を適切に伝えることを指しています。業務を適切に行うためには、各々が必要とする情報を確実に受け取り、理解した上で遂行する必要があるからです。
情報と伝達を適切に行うことで「業務の有効性及び効率性」と改善することができます。社内の状況をスピード感をもって知ることができるので、次の一手を打ちやすくなります。
3-5.モニタリング
モニタリングとは、内部統制が適切に機能しているかどうか確認することです。モニタリングの結果改善が必要であれば、対応策を講じます。
モニタリングを把握することで「財務報告の信頼性」を上げることができます。隠ぺいや不正会計を監視することで、適切な財務報告を行います。
3-6.ITへの対応
ITへの対応とは、ITを適切に使用することを指しています。ITは現代社会ではなくてはならないものです。効率的に業務を行うため適切に利用し、不正やトラブルが起こらないよう統制をかける必要があります。
ITの体制を整えることで「業務の有効性及び効率性」を上げることができます。また「資産の保全」の観点から情報を漏洩を防ぐことができます。
4.企業の全員が関係者!内部統制に関わる者の役割と責任
内部統制には企業内のさまざまな役職の人が関わっています。どのような人が内部統制に関わり、どのような役割・責任を担っているのか整理していきます。
4-1.経営者
経営者は内部統制を整備及び運用する役割と責任を担っています。企業の最終責任者である経営者には適切に内部統制を運用し、1年に一度内部統制報告書を提出する義務があります。
4-2.取締役会
取締役会の役割は、内部統制の整備及び運用に関する基本方針を決定することです。また、経営者が行う内部統制の整備及び運用を監督する責任も担っています。
4-3.監査役又は監査委員会
監査役又は監査委員会は、取締役及び執行役の職務の執行を監査する立場にあります。そのため、取締役及び執行役とは独立した立場から内部統制の整備及び運用状況を監視し、検証する役割を有しているのです。
4-4.内部監査人
内部監査人の役割は、企業内で内部統制の整備・運用状況を検討・評価し、必要に応じて改善を促すことです。監査役が独立した立場にあるのに対して、内部監査人は企業内部の人間という立場から内部監査に関与します。
4-5.組織内のその他の者
組織内のその他の者とは、ここまでに出てこなかった組織内のすべての人のことです。組織に属するすべての者は、業務を通じて内部統制に関わっています。これらの人々も内部統制を適切に運用する役割を担っています。
5.まとめ:内部統制には組織全員で取り組む意識が必要
内部統制の4つの目的を達成するためには、6つの基本的要素を適切に整備・運用する必要があります。
6つの基本的要素を整備・運用するためには、企業に属するすべての人が内部統制に取り組まなければなりません。企業に属するすべての人は、それぞれ内部統制に対する役割と責任を担っているからです。
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