コラム

コーポレートガバナンスと内部統制の違いと強化方法

2021.08.25  |  コラム 経営管理

昨今、コーポレートガバナンスや内部統制について企業間でも理解が進み、導入を経た企業の実績も公開されています。

しかしながら、企業の不祥事を伝えるニュースを見る機会も増えているような印象です。裏を返せば、コーポレートガバナンスによる透明化が進んだことで、不祥事が明るみに出ている側面も考えられます。

そのような状況も踏まえて、今一度、コーポレートガバナンスや内部統制の本来の目的、例えば企業の成長や収益性の向上に向かって進んでいるかを振り返ることも、必要だと感じます。

今回は、コーポレートガバナンスと内部統制の課題と強化方法について紹介します。経営者や管理職の方は、ぜひご一読ください。

また、コーポレートガバナンスの構築体制を検討しておられる方には、ねこの戦略総務がサポートいたしますので、サービスページからお問い合わせくださいませ。

1.コーポレートガバナンスと内部統制について詳しく知る

ままず、これらの概要とその違いを把握し、これらの目的について考えていきましょう。

 1−1.コーポレートガバナンスと内部統制の違いとは?

両者の違いをわかりやすく整理してみましょう。コーポレートガバナンスは株主やステークホルダーと共に「当社は透明で公正なガバナンスを意識している」のように方針を共有する点が、内部統制と大きく異なります。内部統制は主として社内の統制を指すからです。

さらに、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定をコーポレートガバナンスに組み込む場合、いわゆる「攻めのガバナンス」と呼ぶことがあります。

こういう点も内部統制ではあまり唱えられないので、区別するポイントとして挙げられます内部統制は社内的な守りの視点からの仕組みなので、この点は大きな違いになるというわけです。

コーポレートガバナンスが株主やステークホルダーに対し有意義に示された事例は、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。

 1−2.コーポレートガバナンスと内部統制の目的を考える

コーポレートガバナンスの目的とは何か、東京証券取引所が公表している「コーポレートガバナンス・コード」の説明を借りれば、企業が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味するとなります。

さらに、こうした仕組みによって社会的信用を得て、企業を成長させることが目的です。

一方、内部統制については、次の4つの目的があります。

・業務の有効性及び効率性
・財務報告の信頼性
・事業活動に係る法令等の遵守
・資産の保全

これらを踏まえて、企業価値と社会的信用を維持・向上することが重要です。

内部統制は、日本版SOX法(J-SOX)から注目されはじめました。ただ、企業の持続的発展のためには、内部統制の他に、外部リスクや事業機会に取り組んでいく枠組みを作る必要もあります。

こうした内部統制の限界を超えて、企業を持続的に発展させる枠組みとして、外部の株主などにも開かれたコーポレートガバナンスというものが必要になっているのです。

2.コーポレートガバナンスと内部統制に関する課題と事例

これらの実現に際しては、様々な課題が生じます。事例を見ながら自社についても考えてみましょう。

 2−1.コーポレートガバナンスと内部統制の課題

内部統制を運用していくと、現場は改善の施策にとらわれすぎ、効率性や生産性、収益性が落ちそうに見えることが課題になります。

しかし、内部統制は本来、企業の稼ぐ力に結び付くように考え出されたものです。したがって、改善の施策に時間を裂きすぎずに、効率性や生産性、収益性の向上に集中する攻めのガバナンス、攻めの内部統制を実現すれば、企業の活力が上昇していきます。

コーポレートガバナンスにおいては、企業が健全かつ、持続可能な発展を担保するために、どのような方向に向かっていくのかを明文化して追求することが必要です。

また、方向を見誤らないようにするには、どうあるべきなのかを意識し、施策にすることが大切です。うまくいけば、企業の生産性や収益性も伸びて、企業価値が高まる、と結果的には経営の本題を実現することになるのです。

 2-2.コーポレートガバナンスと内部統制の事例

コーポレートガバナンスを掲げる上での目標は、企業が社会的な信頼を獲得し、収益性などを成長させることです。一つの理想的な事例としては、大成建設株式会社の内部統制が挙げられます。

「企業としての持続的な発展を図り社会からの信頼を獲得するため、経営における意思決定の迅速性、的確性、公正性及び透明性を確保することを、コーポレート・ガバナンスの基本的な考え方としております。」

もう一つ、日本電産グループの事例で言えば、目標に関して「持続的な企業価値の拡大を図る」と明確な表現が使われています。

「日本電産グループにおけるコーポレート・ガバナンスの目的は、企業の誠実さを確立した上で社会の信頼を獲得し、「高成長、高収益、高株価」をモットーとした持続的な企業価値の拡大を図ることにあります。この目的のため、内部統制の維持・強化を図ることにより経営の健全性・効率性を高め、情報開示の充実を図ることにより経営の透明性を高めます。」

さらに、ハリマ化成グループが公表している内部等統制システムによると、「株主はじめ、顧客、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーに対して、ハリマ化成グループの企業価値を高める」と詳細な表現で読み手にわかりやすく表現されています。

「健全なる企業活動を通じ、株主はじめ、顧客、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーに対して、ハリマ化成グループの企業価値を高めることをコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方にしています。」

併せて実施状況も公表されており、参考になる要素も多分にあります。

3.コーポレートガバナンスと内部統制の強化方法

これらの体制を築いて満足するだけでは不十分です。実効性のあるものにするための、強化方法について考えることが大切です。

 3-1.コーポレートガバナンスの強化方法

コーポレートガバナンスを強化するためには、内部統制の整備が必要です。それでこそ、社内外に対する「透明性の高い情報の開示」が実現できます。そのためには、取締役会や内部監査部門が先頭に立って、社内ルールの遵守を監督することが重要です。

また、経営側の一部による不正を防ぐには、第三者的視点での監視体制が重要です。内部監査だけでなく、独立性を持って客観的に評価できる、社外取締役や社外監査役、報酬委員会による監督体制を作ることが有効です。

一方、従業員に対しては、行動規範や倫理憲章などを浸透させ、従業員が業務遂行や意思決定するための判断基準を明確にしましょう。同時に業務プロセスを可視化、マニュアル化して、業務の遂行内容を把握することも大切です。

 3-2.内部統制の強化方法

内部統制では、社内ルールによって事業活動を統制し、経営者や従業員などが起こしそうな不祥事・諸問題を回避します。

そこで内部統制を強化する方法の一つは、起こりうる不祥事のリスクを挙げて、それらを防ぐコンプライアンスやリスク管理のルールを設定し、遵守するよう監督することです。

会社の規模に関わらず取り組むべき課題としては、ワンマン経営の防止が挙げられます。そのためにも取締役会の意思決定の課程は、議事録のファイルとして可視化しましょう。それも内部統制を強化する一つの方法です。

また、代表取締役や業務執行取締役など個々の取締役が適正に職務を行っているかを監督する、疑わしい行為があれば是正することが必要です。そうした内部統制の強化でも、経営者の不正や会社の私物化を防ぎ、企業の透明性を確保できます。

さらに、自社の「内部統制報告書」をまとめ、監査役による監査を受ければ、問題点が浮かび上がり、統制・改善・強化方法も見つけやすくなります。

上場企業の場合は、内部統制に関する考え方や整備状況も、コーポレートガバナンスに関する報告書で開示するよう促されます。そこでも内部統制の強度が外部から評価されるので、不透明や不公正だと指摘される点を改善し、内部統制を強化するという方法もあります。

4.まとめ:「コーポレートガバナンスと内部統制」に関するご相談を承ります

今回は、コーポレートガバナンスと内部統制について、その多様な課題についてご紹介しました。各社の取り組みについても、事例を挙げて、目指すべき方向性や強化策について解説しました。

HINODEの「ねこの戦略総務」では、企業に対して、内部統制のサポートからコーポレートガバナンスの構築体制まで幅広くサービスを提供しています。

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