バックオフィスの役割とは?効率化で実現する3つのメリットと改革方法を紹介
世界の総務部やバックオフィスのあり方に詳しい、一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムのクレイグ・カックス副代表理事によると、日本のバックオフィス業務は30〜40年遅れており、プロの手にかかればコストカットや生産性を大幅に向上させることができると言われています。
そんなポテンシャルを秘めたバックオフィス業務ですが、会社の中では「事務的な作業は完ぺきにこなすのが当たり前」と思われる会社もあるようで、新しいことに能動的に取り組む機会が減ってしまっても仕方ありません。
そこで今回は、「攻め」のバックオフィス(戦略総務)を作るために、そもそものバックオフィスの意味、改革を行うための方法や改革例などについて紹介したいと思います。
目次
1.バックオフィスとは
バックオフィスとは、顧客に接する部門や本業の中枢を担う部門を「支援する部門」のことです。具体的には、経理財務・人事・法務などの部門のことを言い「ヒトモノカネ」の管理業務の位置づけで、営業やマーケティングなどのフロントオフィスとは違い、直接利益を生まない業務のことを指します。
1-1.経理・人事・法務など他部門の支援をする職務
バックオフィスとは、顧客に接する部門や本業の中枢を担う部門を「支援する部門」です。
具体的には、経理財務・人事・法務などの部門のことを言い「ヒトモノカネ」の管理業務の位置づけで、営業やマーケティングなどのフロントオフィスとは違い、直接利益を生まない業務のことを指します。
⑴経理:お金の支払・請求などの出納業務や帳簿の記帳、決算書作成のための集計など企業のお金とお金の流れを管理する業務。
⑵財務:事業の予算管理や事業上の資産(アセット)の運用を行う業務です。企業によっては、経理が兼任している場合もあるが、規模が大きくなると、より業務が分断され、役割が分業していきます。
⑶人事・労務:社員の採用や採用管理、育成、定着を担う業務。退職、部署異動、転勤の手続きを行う場合もあるので、小規模の企業では「人事労務」で兼任することもある
⑷総務:オフィスの備品管理や社内規定、経営層と現場のメンバーの繋ぎ役、社内ルールの整備などを行う業務。会社によっては、経理や事務が兼任している場合もあるが、スタートアップのような企業でも最近では、総務の専任担当者や広報と兼務しているケースもある。
1-2.同義語は間接部門・管理部門・コーポレート部門など
バックオフィスという言葉は、もともと欧米で生まれた言葉ですが、日本ではこれまで別な呼び方でした。間接部門(間接業務)・管理部門(管理業務)・コーポレート部門・本社機能などと呼ばれており、グローバル化の流れに伴って呼び方が統一されるようになってきました。
1-3.対義語はフロントオフィス
バックオフィスの対義語となるフロントオフィスは、顧客と直接のやりとりをする部門であり、売上に直結する活動を行います。
例えば、営業職がイメージしやすいでしょう。営業担当者は、自分で提案書を作って、客先に足を運び、自社の商品やサービスを売り込み、契約をとる仕事なので、顧客との直接のやりとりはかかせません。
他には、マーケティング部門やコールセンター部門などもフロントオフィスの業務と言われております。
一般的にバックオフィスのメンバーは、フロントオフィスの業務をサポートしたり、企業活動を続けるために必要な手続きを行うなどがメインとなりますが、近年では、コーポレートガバナンスの重要性が謳われており、裏方的なイメージを持たれていた、バックオフィス業務や役割が、より重要視されてきております。
1-4.バックオフィスの重要な理由
事業運営に不可欠な活動として、どのような企業でも
⑴生産機能(サービス・プロダクト開発・製品作り)
⑵販売機能(営業・マーケティング)
⑶管理機能(業務管理・会計・財務機能)
の3つ領域があり、バックオフィス業務は、管理機能(事務・会計機能)に該当します。
フロントオフィスと呼ばれる『サービスや製品をつくり、営業やマーケティングを行う』ことで売上が立っても、バックオフィス領域の『人材の採用、資金繰り、組織作り』など、【作る、売る、管理する】一連のスキームが成立しないと、持続的な成長に繋げていくことはできません。
このような観点で、バックオフィス業務と呼ばれる管理機能に関しては、事業を成長させる上で重要だと考えられます。
2.バックオフィスが秘める可能性
フロントオフィスは、業務内容によっては、お客様と直接的に関わっている時間を短くしたり、効率化することは難しいと言われています。
例えば、対面でのコミュニケーションを重視する営業マンが多くのお客様を担当するあまり、電話での営業をメインに切り替えると言ったらどうでしょうか。お客様一人一人を大切にすることが前提であるため、フロントオフィスの仕事は効率化が難しいのです。
一方で、バックオフィスの多くは、直接顧客と接する機会が少なく、パソコンなどを使った事務作業が多いため、後述するクラウドソフトやアウトソーシングを組み合わせることで、かなりの業務効率化を期待することができます。
3.バックオフィスを効率化させるメリット
3-1.人件費の削減ができる
1つ目のメリットは、人件費の削減です。例えば、これまで行ってきた事務処理をクラウドソフトで効率化させたり、外部にアウトソーシングして委託することで、事務処理に当てていた人件費を削減することができます。
バックオフィス業務は、会社を運営し、取引企業が増加(売上が増加)すると、書類作成、契約書の捺印、社内連携や庶務と呼ばれる事務作業が比例して増加します。
人を介さないで、アウトソーシング・ツール利用を活用し、人件費を抑制することが必要になります。
また人件費が増加すると固定費になる企業も多いので、売上に直結しない作業ベースの業務は、外注化、仕組み化することで、よりリスク低下する方向性にシフトする企業も多くなってきております。
3-2.コア業務に集中できる
2つ目のメリットは、今までの業務に使っていた時間が減るので、それを別な業務に時間を割くことができます。
例えば、会社の経理データを分析することで、会社の問題点を洗い出し、改善案を出す時間に労力を割けるようになます。バックオフィスの効率を上げれば、会社全体に関わる改善案も出すことができます。
バックオフィスをアウトソーシング、BPO、仕組み化を行うことで、より強みにフォーカスする機会を作れます。
3-3.人的なミスを徹底的に削減ができる
バックオフィス業務では、これまでデータ集計や入力が必須の業務フローで、二重入力、転記、目視チェックといったルーティンワークが発生します。
機械で行うわけではなく人間が作業と、書類の確認漏れ、転記ミスにより金額が合わない、といったヒューマンエラーが起こる可能性をなくすことはできません。小規模バックオフィス業務を複数掛け持ちしていたりすると、ミスのリスクはより高くなるでしょう。このような点で、バックオフィスを効率化・仕組み化を図ることで、ヒューマンエラーを徹底的に撲滅し、効率化に繋げることができるメリットがあります。
3-4.労働時間の削減で、働くモチベーションの向上に寄与
人がやらなくてもいい業務を削減し、ミスを撲滅でき、コア業務にフォーカスできると、必然的に働く人が、より生産的な働き方ができ、より組織に貢献できる土壌が構築できます。
そうすることで、働く人のモチベーションが向上しやすくなり、また社内環境が改善され、間接的に事業成長に繋げていくこともできます。
4.バックオフィス業務を効率化させるための方法
バックオフィスの大まかな内容とメリットを理解したところで、バックオフィスの改革を行うための方法を紹介していきましょう。
4-1.業務効率化ツールを使う
ツールを導入することで、これまで人が行ってきた事務処理を効率化させます。比較的低コストで導入がしやすく、他社へのツールの乗り換えも行いやすく、リスクも少ないのが特徴です。
勤怠管理、給与計算、経費精算、法務、人材管理など様々なサービスが存在します。記事の後半部分では、それぞれのツールについて紹介します。
⑴経理・財務:給与計算、経費精算の業務効率化クラウド
⑵人事・労務:採用効率化、人材管理クラウドツール
⑶総務:総務業務は、お金(財務経理)や人(人事労務)を扱う部門ではなく、また労働集約作業の観点で、業務をアウトソーシング(BPO)する形で扱われることが多いです。
実際、業務をアウトソーシングは、管理業務を戦略的に仕組み化することまでは対応しません。
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4-2.バックオフィスサービスを利用する
バックオフィスサービスは、社内の人間が今まで行っていた業務を外部に委託します。業者によって特徴があり、オンライン完結タイプと人材派遣タイプがあります。
4-2-1. オンライン完結タイプ
オンライン完結タイプでは、業者のオフィスで業務が行われます。そのため、自社でパソコンやデスクを用意する必要がなく、スタートアップやベンチャーにとっては使い勝手が良いと言えるでしょう。
4-2-2.人材派遣タイプ
人材派遣タイプでは、実際に会社に来てバックオフィス業務を行ってもらえるのが特徴です。事務処理を行うだけなく、社内体制の仕組み作りまで行ってくれる業者もあります。
また、それぞれの分野の専門家を呼ぶこともでき、税理士、司法書士、行政書士、労務士などちょっとしたことで聞ける人がいるのは心強いでしょう。
4-3.RPAを活用する
経理などのルーティン業務などを、一部をロボットに置き換える(業務の自動化)サービスの導入も検討する選択肢もあります。
RPAを導入することで、ミスなく、人的作業よりも早く事務作業を行うことができるので、予算的な観点や中長期的にRPAのオペレーションが検討できる企業にとっては、大きなメリットが享受できる場合があると考えられます。
ここまで「クラウドサービスの活用、アウトソーシングの活用、RPA」と、3つの効率化の方法をご紹介してきましたが、現状の自社の状況、組織の目的や方向性、予算等を考慮して、それぞれの良さを活かしながら、組み合わせていく必要があります。
5.バックオフィスを業務効率化させるためのツール・ソフト
5-1.会計ソフト
会計ソフトとは、会社のお金の流れを全て集計・管理し、決算書作りまで行うことができるソフトです。
これまでは、売掛、買掛、入金、出金といったお金の動きを手動(紙や伝票)で記載し、それを仕訳帳や総勘定元帳に転記といった作業が必要だったので、少人数の会社でもある程度の簿記の知識は必要でした。
しかし、会計ソフトを使うことで、自動で勘定科目を選んで仕訳され、集計されるため、間違いが起こりにくく、会計業務における負担を減らすことができます。
5-2.請求書発行システム
請求書発行システムとは、請求書の作成・送付に関する作業を効率化させるためのシステムです。
どのような会社でも法人取引であれば、特に請求書の発行業務が存在しますが、これまではエクセル表で管理し、手作業で印刷して郵送していたものが、システムやクラウドを導入することで、請求書作成し、電子メール送信や郵送代行、入金確認も一連のプロセスでできるような業務フローに改善できます。
また、見積書、納品書、領収書などの発行もできたり、連携したSFAから金額のデータを取り込んで請求書を作ることもできるので、SFAと請求金額のズレを解消させや
すいというメリットもあります。
5-3. 勤怠管理ツール
勤怠管理ツールとは、従業員の出退勤時間を管理するためのツールのことをいい、勤務時間・残業時間・勤務日数などの管理ができます。
これまでは、タイムカードを使って紙媒体で管理している会社が多かったのがですが、入力や集計作業に時間がかかったり、打刻漏れが発生したり何かと手間がかかっていました。
勤怠管理ツールを使うことで、パソコンやスマートフォンで簡単に管理することができ、勤怠管理以外にもシフト管理、働きすぎによる残業基準の設定や給与ソフトの連携で、自社に合った勤怠管理を行うことも可能です。
リモートワークが増え、出社スタイルではなくなってくる現在の働き方に合った勤怠ツールも今後より出てくる可能性があります。
5-4.法務におけるクラウドサイン
クラウドサインとは、「紙と印鑑」を「クラウド」に置き換え、契約作業をパソコンのみで完結させるシステムです。
契約書を紙で作成する場合、プリントアプトして印鑑を押し、取引先に郵送して印鑑を押してもらい、返送されるのを待つといった手順を踏むことになります。また、契約書が増えれば、保管場所の確保も考えなければいけません。
クラウドサインを使えば、郵便切手代にかかっていた実費のほか、発送作業にかかっていた人件費の節約にもつながります。また、膨大な書類の中から契約書を探すことも、パソコンの検索画面を使えば、簡単に探し出すこともできます。
6.バックオフィスの改革例
6-1.会社を黒字化するための経理改革
経理は会社の血流である「お金の流れ」を管理する仕事で、経営に直結する仕事です。具体的な業務では、伝票処理等のお金の流れの情報入力、決算関連書類作成、入出金管理などを行います。
黒字化するための経理とは、公認会計士や税理士などの会計のスペシャリストまでとはいきませんが、社内の経理担当が経営判断に役立つ提案を行います。
そもそも経営判断に必要な数値が何か明らかにし、営業サイドにかけ合って、数値が分かるような仕組み作りをしたり、営業が経費精算の管理ができていないようであれば、クラウド経費精算ツール導入の提案をしたりします。
6-2.人事をアウトソーシングすることでコア業務に集中
人事は「ヒト・モノ・カネ・情報」という経営資源の中で、もっとも重要とされる「ヒト」を管轄する部署です。人事の仕事は、採用や人材開発、制度設計などの企画系の仕事と、勤怠管理や給与計算を行うような事務系の仕事の2つに分けることができます。
改革の例として、毎月必ず行う給与計算は、法律関連の理解という専門性や給与計算のミスは許されないなど、事務仕事とはいえ、担当者の負担は大きくなります。
定型の事務仕事をアウトソーシングして外部に委託することで、その業務関わっていた人材や時間をより重要な人事業務に当てます。
6-3.アウトソーシングを使って社内体制の構築化
ある製造メーカーの例ですが、担当者ごとに業務の処理方法が属人化していることが課題でした。定型業務の量が多く、月末は残業過多になり、満足に有給休暇を取得することさえ困難といった課題がありました。
アウトソーシングを使い、外部に業務調査を行ってもらうことで、業務ごとの違いを可視化させ、属人化していた業務処理スキルの統一化に成功しました。
業務を定期的にローテーションをすることで、従業員のマルチスキル化が実現し、上司の手助けなく、従業員同士でフォローし合うことが可能になりました。社員の残業や有給取得の問題も解決され、新しい業務に着手する時間も生まれようになりました。
7.バックオフィスサービスを導入する際の注意点
バックオフィスサービスを行う業者は多く存在しますが、得意分野がまちまちであったり、長期間の運営を行うことを前提とした契約になる場合が多く、事前に選ぶ際の注意点を確認しておくようにしましょう。
7-1.目的の明確化
コスト削減なのか、品質向上なのか、目的によっては業者に依頼する業務内容や専門性が異なってきます。こちらの要望に答える対応力があるのか「提案力」があるかどうかも重要になってきます。
7-2.業務範囲の確認
どの業務まで任せるのかを整理し、あらかじめ概要を作っておくことが大切です。例えば、最初の電話応対は自社で行い、専門的な問い合わせに関しては、業者にお願いするなど、業務範囲やフローを明確にしておくと良いでしょう。
7-3.機密情報の保護
バックオフィス業務をアウトソーシングするということは、自社の情報を社外に提供することでもあります。情報を漏洩のリスクを限りなく低くするために、秘密保持契約を締結したり、情報漏洩した時の緊急対応の方法を確認しておきましょう。
7-4.ノウハウの蓄積
間接業務だからといって、全ての業務をアウトソーシングすることはいけません。
事業のコアに繋がるような領域(不動産であれば財務、人材採用や育成が事業に繋がりやすいサービス系の事業)は、なるべく社内で仕組み化する「バックオフィスの仕組み化」を図っていかなければなりません。
8.「バックオフィス」に関するご相談を承ります
今回は、バックオフィスの基本的な内容からメリット、アウトソーシングを使った改革の仕方などについてお伝えしました。
バックオフィスの改革は、時間がかかるものですし、業者に依頼するとなると、費用面でもそれなりにコストが発生するため、業者選びには慎重になるでしょう。
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